January 26, 2008

脳内エンターテインメント。

469b2f11.jpg水曜日のお話。

落語の桂文珍さんの独演会が那覇市民会館であったので、行こうかどうしようか当日まで迷った挙句、観に行った。落語を聴くのはおよそ3年ぶりのこと。人気の落語家なので当日券の販売があるかどうかがものすごく心配だったが、会場に着くと奇跡的に10枚程度だけ残っていた。しかし空いていたのは2階席の最後列だけ。今回の独演会はテレビ局の主催ということもあり、大盛況だった。

今年で還暦を迎えるという文珍さんは、現在47都道府県をすべて回るという独演会ツアーをやっている最中なのだとか。そのバイタリティたるやとても60歳とは思えないぐらい若い。

文珍師匠の落語を聴くのはこれで2回目だが、前回も今回も文珍師匠は落語だけでなく、その口から紡がれる1つ1つの言葉に、ものすごくスマートな笑いが練り込められていると感じる。文珍師匠はまさに"Intelligence"な方なのだと思う。


前回聴いたときはコザ(沖縄市)のあしびなーという中規模のホールだったのだが、そのときは客席の半分ぐらいが空いていた。そのときの文珍師匠の第一声は今でも憶えている。

「いやー本日も満員御礼で、落語家冥利に尽きます。え、違う? いやいや、皆さん勘違いなさってますわ。空いてる席以外は全部埋まってますわ」

その一言でホールが沸き、その瞬間から何というか客席と高座がある種一体となったような、ものすごく心地よい空気に包まれた。そして、この一言で、おそらく文珍師匠を招いたホール関係者が救われたに違いない。でも彼らは胸が少しだけチクリとしたかもしれないけど。


今回も文珍師匠の噺は天下一品だった。
最初に高座に上がった方が「時うどん(→上方落語なので「時そば」ではなくって「時うどん」)」を演った。
するとその次に上がってきた文珍師匠は、同じ「時うどん」をやりはじめた。舞台を江戸時代から、現代のアメリカに変えてしまい、さらにほぼ全編英語で。前の方が沸かせた客席を、冷ますことなく完全沸騰状態にしてしまった。
客席も前のオチがわかっているのに、悔しいかな同じところでやっぱり笑わされてしまう。さらに、頭のいい文珍師匠は時事ネタを予想外のところでぽーんと放り込んで客席をさらに沸かせる。笑いながらも、客席にいる自分は時々まるでレッドソックスの岡島投手に討ち取られたバッターのような気持ちになる。

落語は、高座と客席の真剣勝負。でも、同時に客席1人ひとりの脳内ではそれぞれに広がる世界が異なるから面白い。高座から投げられるスピードボールや変化球を真芯で受け止められる人は脳内で超一級のエンターテインメントを堪能できるが、捉えきれない人は、何が面白いのかわからないままだ。もちろん、その逆もある。
生来備えていた笑いの才能に加えて、数え切れないほど多くの真剣勝負を積み重ねてきたからこそ、文珍師匠の落語はあれほどに洗練されていて、そしてあれほどに面白いのであろう。


ボクが大学生だったちょうど同じ頃、文珍師匠は関西大学でセンセイをしていた。教鞭をとっていた大学も学部も全く違ったけれど、後に出版された講義録を読んで、彼の講義を受けられる関西大学の学生をすごくうらやましく思った。その内容は概して真面目だ。しかし真面目だからこそ面白いこともあるのだ。文珍師匠の落語が好きになったのは、その本に出会ったからかもしれない。

「落語的学問のすゝめ」



彼の噺を聴いた夜は、すごく贅沢な時間だった。

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この記事へのコメント

1. Posted by TETSU    January 26, 2008 22:43
文珍師匠は趣味も多彩で活動的だと聞いています。
大阪の八尾空港に自家用飛行機を持っていて、自ら操縦したり。
(開港直前のセントレアに自家用機で初着陸)
大型三輪オートバイ(トライク)を運転したり。
ご自分のやりたいことにどんどん挑戦している、そんな人生を送りたいです。
2. Posted by Concierge YASDA    January 27, 2008 12:41
> TETSUさん。
自分のやりたいこと、興味を持ったことを、手を抜かず、それぞれ一生懸命に取り組んでいるから若いんでしょうねぇ・・・。
文珍師匠だけでなく、それぞれの第一線で活躍している方ほど多趣味なヒトが多いように思います。そんな素敵な人生の送り方をボクもできるようになりたいですねぇ。

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